●診療内容●
不安神経症、不眠症、
うつ病、パニック障害、
摂食障害、
強迫性障害、
自律神経失調症、
更年期障害、
統合失調症、対人恐怖症、不登校、
適応障害、PTSD、
認知症、
躁うつ病、
パニック障害、
てんかん、
パーソナリティ障害、
心気症などの診療。
基本的には、お話を聞いて、その人に最も合った治療方法を選びます。
お薬が必要な場合には、積極的に薬を投与します。
うつ病の薬、安定剤、睡眠剤、漢方薬などをバランスよく配合します。
カウンセリングを受けていただくこともあります。
時によっては、お話に耳を傾け必要なアドバイスもし、
時によっては、専門の医療機関などを紹介します。
診療にかかる時間は、初診の方の場合で30分程度で、再診の方の場合で10分程度です。
次のような症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご来院ください
【1】気分がゆううつでやる気がなく、食欲もなくやせてきている
【2】朝起きる時、体がだるく、仕事も家事もはかどらない
【3】いつもイライラして落ち着かない
【4】肩がこったり、頭痛がしたり、腹痛やめまいや吐き気や手のしびれがある
【5】取り越し苦労をしやすく、先々のことが不安である
【6】電車の中や人ごみで急に息苦しくなったり、倒れたりする
【7】人前で顔が赤くなり話ができなくなる
【8】人前で手が震えて字が書けなくなる
【9】人目が怖くて、美容院や歯医者にいけない
【10】不潔と思って、電車やバスのつり革が持てない
【11】気になって、何回もガスの元栓を確認したり、ドアの鍵をかけたか確認する
【12】夜がなかなか寝付けない
【13】夜中に何回も目が覚める
【14】朝、早くから目が覚めてしまう
【15】出社拒否や不登校になってしまう
【16】物忘れが進んできて、周囲の人が心配する
【17】拒食や過食がひどい
【18】その他の悩み事や心配事など
●診察にあたって●
- 当院は、入院施設はありません。ですから、興奮状態にあって、大声で叫んだり、暴言を吐いたりする方の
診察はお断りいたします。
- 同じ理由で、救急車によって搬送されてきた方の診察はお断りいたします。
- 当院は、その専門施設ではありませんので、覚せい剤、大麻、アヘン、脱法ドラッグなどの乱用や依存症の治療は行っていないため、診察をお断りいたします。
●診療費用●
基本的には保険診療となります。
20歳以上の方で保険を使えば、初診で2400円くらいで、再診で1400円くらいです。
20歳未満の方は、初診で3500円くらいで、再診で2400円くらいです。
当院は、院外処方制をとっております。薬は、隣のビルの1階にあるサン薬局新大宮店
にて処方いただいております。薬代はそちらで支払っていただきます。
頻回の診察で診察代金の支払いに窮したり、多量の薬代でお困りの方のために
自立支援医療制度が使えます。その制度を利用すれば、診察代や薬代がお安く
なります。医師にご相談下さい。
診断書の類は、すべて自費負担となります。通常の診断書は、3000円で、
自立支援の診断書は、5000円です。
しかし、精神障害者福祉手帳の診断書及び
精神障害者年金の診断書は、受診されてもすぐに書くことはできません。
精神障害者福祉手帳の診断書については受診後半年を経過した後に作成できます。
また、精神障害者年金の診断書については受診後1年半を経過した後に作成
できます。医師にご相談ください。手帳の診断書は、10000円で、年金の診断書は、
15000円です。
●こころの病気●
最後に、こころの病気についていくつか紹介します。内容は、殆ど「標準精神医学第7版」医学書院刊からの
抜粋によります。
【1】不安症群
(A)限局性恐怖症 specific phobia
特定の対象または状況(飛行、高所、動物、虫、注射、血など)に関する著しい恐怖や不安が存在し、もし
それらに暴露した場合には、直ちに不安や恐怖が引き起こされる。そのため、これらの対象や状況は積極的に
回避されているか、あるいは患者さんは苦痛をもって耐え忍んでいる。
(B)社交不安症 social anxiety disorder
社会・行為状況(人前で話しをする・食事をする・字を書く、他人・特に目上の人と会話する、人に意見を
述べる、パーティ・デートなど)に対する顕著で持続的な恐怖・不安があるために、その状況を避け、あるいは
強い苦痛を感じながらも、無理に耐えている。もし、これらの状況に暴露されると、ほとんど必ず不安や恐怖
が惹起される。生じる不安反応には、動悸、震え、発汗、腹部不快感、下痢、悪心、めまい、筋緊張、赤面、
混乱、窒息感などがあるが、時にはパニック発作が起こることもある。
患者さんは、他人の注視を浴びるかもしれない
状況において、自分が恥をかかされたり、恥ずかしい思いをしたり、あるいは不安症状を呈することに対して、
顕著で持続的な恐怖・不安をもち、「もしあの状況が起こったら、どうしよう」という著しい予期不安がある。
そして、これらの恐怖・回避・予期不安のため社会機能・対人関係が著しく障害される。決して単なる「内気」
ではない。
このあたりのことは、自著「精神科医の涙」文芸社刊を読んでいただければ、よく理解して
いただけると考えている。私自身も社会不安症・視線恐怖症であった。社会的に大きなハンディを背負っていた。
(C)パニック発作 panic attack
突然の強い恐怖または不快感の高まりで、それらの症状のピークは症状が現れてから数分以内に達する。その間、
(1)動悸、心悸亢進、または心拍数の増加 (2)発汗 (3)身震いまたは震え (4)息切れ感または息苦しさ
(5)窒息感 (6)胸痛または胸部の不快感 (7)嘔気または腹部の不快感 (8)めまい、ふらつき、頭が軽く
なる感じ、または気が遠くなる感じ (9)寒気または熱感 (10)感覚麻痺またはうずき感 (11)現実感喪失
または離人感・自分自身から離脱している感じ (12)抑制力を失う状態または”どうかなってしまう”ことに
対する恐怖 (13)死ぬことに対する恐怖 、これら13の症状のうち4つまたはそれ以上が生じる。
パニック発作は、家でゆっくりくつろいでいる時や通勤電車の中、運転中など、普段の何気ない行動の最中に
起きることもあれば、何らかの誘因やきっかけが原因で起きることもある。
(D)全般不安症 generalized anxiety disorder
不安神経症と思ってください。患者さんは、多くの出来事や活動、例えば、仕事や学業などについて過度な不安や心配
を持ってしまう。不安の対象は様々だが、リストラされるのではないかとか、失職して住宅ローンが払えなくなるので
はないかとか、自分や身内に病気や不幸が起こるのではないかとかなど、日常的な生活環境についてのことが多く、
いずれも将来の見通しは現実に比べて過度に悲観的なのが特徴である。加えて、落ち着きのなさや易怒性、集中困難、
緊張、過敏、易疲労感などの精神症状や、頻脈、発汗、振戦、睡眠障害といった自律神経過活動、筋緊張による
肩こりや頭痛などの身体症状を伴う。
【2】強迫症および関連症群 obsessive-compulsive and related disorders
(A)強迫症 obsessive-compulsive disorder
強迫観念あるいは強迫行為のどちらか、あるいは両方が存在する。強迫観念とは、反復的で持続的な
思考、衝動、あるいは心象で、侵入的で好まないものとして体験され、ほとんどの患者さんに強い不安や
苦痛を引き起こす。さらに、患者さんはこの思考、衝動、心象を無視したり、抑制したり、また何か他の
思考や行為によって緩和しようと試みる。一方、強迫行為とは、強迫観念による苦痛や不安を予防したり、
緩和したりするために明らかに過剰に反復的に行うものである。具体的には、手を洗う、確認する、順番に
並べるなどの実際に体を動かして行う行為から、数を数える、声を出さずに言葉を繰り返す、祈るなどの
心の中での行為まで、さまざまである。患者さんは、強迫観念に反応して、あるいは厳密に適用しなければ
ならない規則に応じて、強迫行為を行うように駆り立てられていると感じている。これらの観念や行為に
費やす時間は、1日1時間以上に及ぶこともある。
(B)醜形恐怖症 body dysmorphic disorder
身体的な外見に関する1つ以上の欠陥または欠点への過剰なとらわれである。その欠陥またはとらわれは
他人にはわからないし、あってもごくわずかなものである。そのため患者さんは、鏡を見たり、過度に手入れを
したり、皮膚を引っかいたり、保証を求めたり、あるいは他人の外見と比べたり、といった行為を繰り返す。
とらわれの過剰性に対する認識は、きちんと洞察されている場合からまったく病識に欠け妄想的な確信に
なっている場合まで、さまざまである。最もよくある身体部位は顔や頭で、具体的には、髪の毛が薄くなっている、
にきび、しわ、瘢痕、血管の斑紋、顔が青白いあるいは赤い、顔の不均衡やゆがみ、顔面の多毛などを訴える。
その他、鼻や目、眉毛、耳や口、顎や歯、頬や頭の形や大きさへのとらわれもよく見られる。また、性器や
乳房、殿部や腹、腕や脚といった部分も心配の的となる。
(C)ため込み症 hoarding disorder
現実的に価値がないにもかかわらず、物をため込み、捨てられないことであるが、その理由は物を保存しておきたいという
強い衝動、あるいは捨てることに対する著しい苦痛のためとされている。そのために、生活空間に物があふれかえり、寝るところさえなく
なってしまう。重度の場合、衛生面や失火、物の崩壊による怪我などの問題も深刻である。ため込む物は、本、新聞、衣類、
靴、レシート、文房具、空き箱、空き缶、テープ、時には電化製品や家具などさまざまで、巷に言う、”ゴミ屋敷””片づけられない
女たち”なども本症の可能性がある。なお、患者さん自身がそのため込みに対して、過剰である、あるいは不合理であるという
認識については、十分な場合からまったく欠如している場合までさまざまである。
(D)抜毛症 trichotillomania
女性に圧倒的に多い。多いのは頭皮、眉毛、まつ毛を反復的に抜くことで、その部位の体毛が喪失し
てしまう。そしてこの行為をやめよう、あるいは回数を減らそうと何回も試みているができない。抜毛
行為によって、重大な苦痛を呈している。なお、小児期の一過性のものは良性の習慣ととらえ、病的
とはしない。
(E)皮膚むしり症 excoriation disorder
自分の皮膚を反復的にかきむしることで、その部位が損傷してしまう。そしてこの行為をやめよう、
あるいは回数を減らそうと何回も試みているができない。この行為によって、重大な苦痛を呈している。
社会的・職業的に著しい障害を呈する。
【3】解離性障害群 dissociative disorders
(A)解離性同一性障害 dissociative identity disorder
2つ以上のはっきりと区別されるパーソナリティ状態によって特徴づけられる同一性の混乱、崩壊、分裂
である。それは、感情、行動、意識、記憶、知覚、認知、そして感覚ー運動機能における変化と同時に
生じる。自己や媒介を自覚する際の著明な不連続性・隔たりを必要とする。さらに患者さんは、毎日の
出来事や重要な個人情報、あるいはトラウマに関する回想が反復的に途切れ、この想起不能の程度は通常の
物忘れでは説明できるものではない。
以前は、多重人格、二重人格、交代人格、交代意識とも呼ばれて
いた。宗教的儀式による憑依状態でも生じる。
(B)解離性健忘 dissociative amnesia
重要な自叙伝的情報、そして通常はトラウマ的な、あるいはストレスフルな出来事の想起不能で、この
想起不能の程度は通常の物忘れでは説明できるものではない。多くは、特別な出来事の局所的または選択的
健忘、あるいは全般的健忘のどちらかである。患者さんはしばしば自分の記憶の問題について気付かないか、
記憶欠損の重大さを過小評価している。
(C)離人感・現実感消失症 depersonalization
一過性の離人感・現実感消失の体験そのものは一般的なものである。その体験が持続性・反復性で、かつ
重篤な機能低下を示すものをさす。
これは、外界意識の障害と内界意識の障害に二分できる。前者では
患者さんは、「現実が生き生きと感じない」「1枚の薄いベールがかかった感じ」といった現実感の消失を述べることが
多い。一方、後者では「あたかも外部の傍観者のように感じる」「夢の中にいるよう」「私が私自身ではない」「自分が
感覚をもっているのはわかるが、実際には何も感じない」「自分の考えが自分自身のものに思えない」「ロボットのよう」
「自分をいつも上から見ている」などの離人感、自己像視あるいは対外離脱体験を訴える。しかしながら患者さん自身
は、その状態を正確に説明することが非常に困難であると感じていることが多い。また、離人感・現実感消失の体験の
間、現実吟味能力は正常に保たれている。
【4】身体症状症および関連症群
(A)身体症状症 somatic symptom disorder
1つ以上の身体症状のために苦痛を感じているか、あるいは日常生活が障害され、さらにその
身体症状や健康不安に関連した過剰な考え、感情、行動が認められる。@身体症状の深刻さについての
不釣り合いで持続的な不安がある、Aその症状や健康に関する不安レベルがいつも高い、B身体症状や
健康不安に向ける時間やエネルギーが過剰である。
(B)病気不安症 illness anxiety disorder
以前、心気症hyhochondriasisといわれていたもののなかで、身体症状を認めないか、あるいは
あってもその程度はごく軽い場合、病気不安症と診断される。その特徴は、”重篤な疾患にかかっている”
という過度のとらわれ、先入観である。患者さんは健康に関する不安は高いので、健康状態のちょっとした
変化を心気的にとらえ、何度も検査をしたり、逆に過度に医療機関への受診を避けたり、不適切な
行動をとる。
(C)転換性障害 conversion disorder
全身を弓なりにそらす後弓反張やけいれん、四肢の麻痺や脱力、運動失調などがあり、失立や失歩、
失声、嚥下困難などの機能障害を呈する。また、視力・聴力の消失(盲や聾)、味覚や嗅覚の消失、
手袋型や靴下型の感覚鈍麻や感覚脱失などがある。そのため著しい苦痛または社会的・職業的機能の
障害を引き起こす。
(D)心身症 psychological factors affecting other medical condition
これは、身体疾患である。ストレスに代表される心理的因子が、症状の進行や悪化、回復からの
遅れなどに関連するような身体疾患のことである。
具体的には、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、
潰瘍性大腸炎、慢性膵炎、慢性胃炎、胃食道逆流症、本態性高血圧症、狭心症、不整脈、起立性低血圧、
気管支喘息、過換気症候群、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、円形脱毛症、アフタ性口内炎、アレルギー
性鼻炎、糖尿病、単純性肥満症、甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、メニエール病、顎関節症、片頭痛、
腰痛症、慢性疼痛、チック、更年期障害、月経前症候群などがある。
(E)作為症 factitious disorder
これは女性に多い。身体的または心理的徴候・症状のねつ造、あるいは偽りの病気やけがを引き起こす
ことが特徴で、患者さんは自分自身が病者やけが人のように他者に対して演じる場合と、他者を病者や
けが人のように見せる場合がある。なお、患者さんはねつ造または偽りであることを認識している。
【5】パーソナリティ障害
(A)クラスターA群:奇妙で風変わりな群
1.妄想性パーソナリティ障害
特徴は、広範な対人的不信感や猜疑心、他者への疑念や不信感、さらに危害が加えられる
ことを恐れたり、周囲の裏切りの証拠を探し続けたりする。自らの正当性を強く主張し、周囲と絶
えず不和や摩擦を起こす。認知や判断が自己中心的、偏狭で、自分の個人的事情によって容易に影
響される。
2.シゾイドパーソナリティ障害
表出される感情に温かみが乏しく、非社交的で孤立しがちで、他者への関心が希薄であること
が特徴である。自然科学や芸術など他の人間との密なかかわりを必要としない領域での活動に専心し、
大きな業績を挙げることがある。
3.統合失調症型パーソナリティ障害
特徴は、奇妙で普通でない行動や思考を示すことである。外見や行動の奇妙さ、会話が風変わりで、
内容に乏しいこと、思考が脱線しやすく、あいまいで過度に抽象的、比喩的であること、感情的反応や
表出が乏しくしばしば適切さを欠くこと、関係念慮、奇異な信念や魔術的思考、妄想様観念などの
精神病症状がみられることがある。さらに、自己の目標設定が非現実的で、自他の境界があいまいで
自己イメージや他者イメージの歪みがみられる。対人関係では、不信感や不安のために親密な関係を
避け、孤立を選択することが多い。家族や近親者に統合失調症が多くみられる。
(B)クラスターB群:演技的、情緒的で移り気な群
1.反社会性パーソナリティ障害
他者の権利を無視・侵害する反社会的行動パターンが特徴である。衝動的・向こう見ずで
思慮に欠け、暴力などの攻撃的行動に走る。他者の感情に冷淡で共感を示さず、信頼・正直さに欠ける。
自己の逸脱行動に責任を負おうとせず、罪悪感が乏しくその行動に後悔しない。自己中心的で自分の利益を
追求し、公共のルールを軽視するといった特徴を示す。 対人関係では、他者の感情や利益に関心を持とうとせず、
他者に対して脅してでも支配しようとする操作性や、冷酷さ、敵意、そして不正直で無責任な振る舞いをみせる。
男性に多い。
2.情緒不安定性パーソナリティ障害
感情や対人関係の不安定さ、衝動的行動が特徴である。感情面では、激しい
怒りや抑うつ、焦燥、孤独といった否定的感情が支配的である。対人関係では、緊密な
葛藤に満ちた関係を形成しやすい。周囲の人を感情的に強く巻き込むこととひきこもり、
理想化と低く評価してけなすことといった両極端な動きをみせることもある。行動面では、
自傷行為や自殺企図、浪費や薬物乱用など自己を危険にさらす向こう見ずな行動が特徴
である。さらにストレス下で妄想反応や解離症状が生じる。自己イメージ、他者イメージ
はあやうく、不安定である。自己懐疑、空虚感によって一定の目標や価値観に基づいて行動する
ことができず、他者への不信感、見捨てられる不安、過敏さ、敵意によって他者の気持ちや
欲求を理解することが困難である。女性が多い。
3.演技性パーソナリティ障害
特に異性の注目や関心を集める派手な外見やおおげさな演技的行動が特徴である。感情
表現は、周囲の人々に強い印象を与えるが、変化しやすい。被暗示性が強く、周囲から影響を大きく
受ける。周囲に認められることを渇望し、外観や身体的魅力にこだわり、異性に対して誘惑的に
振る舞う。女性に多い。
4.自己愛性パーソナリティ障害
自己誇大視と尊大・傲慢な態度が特徴である。周囲の人々を軽視するが、同時にその人々からの
注目と称賛を求めたり、自分を例外的存在とみなす特権意識を抱き、そのような扱いを周囲の人々に
求めたりする。それが受け入れられないと、もしくは他者が批判や無関心を示すと、抑うつや
激しい怒りが生じる。内面的には、自分に強い関心を向けており、他者の自分に対する評価に
強いこだわりを見せる。自己評価はそれによって大きく動揺する。対人関係では、自分を中心に物事を考えており、他者への
共感性が低く、他者の欲求や感情の認識が困難である。
(C)クラスターC群:不安、恐怖を示す群
1.回避性パーソナリティ障害
失敗を恐れ、周囲からの拒絶などを避ける。自己への不確実感や劣等感、恥の感覚などが持続する。
社会的かかわりへの不安から、対人関係に対して消極的になり、社会的活動を避けてひきこもりになることがある。生活全般に
喜びを感じることができず、恋愛や性的関係を避けることもある。
2.依存性パーソナリティ障害
他者への過度の依存がある。行動や決断に他者の助言や指示を常に必要とし、他者に迎合しその意向に従う
ことによって依存関係を維持しようとする。同時に自らの責任を担おうとしない無責任さを示す。他者の
支えがないと、無力感や孤独感を抱きやすい。
3.強迫性パーソナリティ障害
一定の秩序を保つことに固執し、頑固で融通性に欠ける。几帳面で懐疑的になって優柔不断となること、
過度に良心的・倫理的であることが多い。完全主義的であり、特定の行動へのこだわりや細部拘泥があり、
そのためにしばしば作業を完成させることが困難になる。感情表出は乏しく、温かみが欠けている。仕事や
学業などを勤勉に遂行することや過剰に良心的・倫理的を保つことは、自己評価の維持のために重要である。
対人関係では、他者の考え、感情、行動を受け入れることが困難であり、対人交流に支障が生じる。また、
親密な関係の回避、無関心、冷たさを示すことがある。男性に多い。
【6】行動異常
(A)病的習慣および衝動制御の障害
1.ギャンブル依存症gambling disorder
社会的地位、家庭生活、社会的義務の遂行を脅かす賭博を繰り返す。賭博を続けることで、仕事を
続けられなくなり、多額の借金を背負ったり、金を得るために法を犯したり、負債の返済義務
を放棄したりする。賭博の衝動を抑えることが困難である。大多数が男性である。
2.放火症pyromania
強迫的な衝動から放火を繰り返す。一定の意図に基づいて行われる故意の放火であるが、火が燃えることや火事に
関連した事柄に心をとらわれて、その行為自体を目的として行われる。金銭的利益、政治的主張の表現、
犯罪の隠蔽、怒りや報復などを求めての放火などは含まれない。放火者は、放火に先立って緊張、興奮
が高まり、火災が発生するとその光景に魅了され、次いで充足感、解放感に満たされる体験をする。その後、
群衆に混じって火災を見物したり、自分で火災報知器を使って通報したり、率先して消火活動に加わること
がある。若い男性に多い。
3.窃盗症kleptomania
物を盗むという衝動のために窃盗を繰り返す。ほとんどが万引きである。盗むのは、個人的な
実利や金儲けのため、復讐のためといった特定の動機によるものではない。通常の窃盗と異なり、
盗んだものを捨ててしまったり、人に与えたりする。盗む物よりも盗みの行為それ自体が意味がある。
盗む際の緊張感の高まりと、盗みの遂行後に得られる充足感、解放感によって、欲求不満、抑うつ
気分が一気に解消され、快感がもたらされる。しかし盗みを後悔して、後に抑うつ状態になる
こともある。女性に多い。
4.抜毛症trichotillomania
身体の毛、主として頭髪を繰り返し引き抜く。顕著な毛髪損失が生じる。毛髪を引き抜く前に
緊張が高まり、引き抜いた後に安堵感と充足感を生じる。体毛の著しい減少は、多くが頭髪であるが、
眉毛といったそれ以外の体毛の例もある。時に、毛の咀嚼、嚥下を伴う。飲み込まれた毛髪が毛髪
胃石となって、腸閉塞の原因となることがある。女性に多く、思春期に発症することが多い。
(B)性行動の異常
1.性同一性障害gender dysphonia
@性転換症transsexualism
社会の中で異性の一員として暮らし、周囲からも異性として受け入れられたいという
願望を持っている。身体的性別とは異なる性別意識を抱いていることで、性別役割についての
さまざまな葛藤や不利益を被っている。性器などを疎ましく思い、ホルモンの使用や外科的
治療によってその除去を希望する。自分の身体的性別の服装は着けたくない。思春期には、
無月経にするための拒食や胸を隠すための猫背になる。射精や勃起を避けるため自傷行為を
頻回にする。職場での制服や性別役割を拒否して、無職のままで引きこもったりする。
A小児期の性同一性障害gender identity disorder of childhood
小児期早期から、性別や社会的役割に強い苦痛を抱く。異性になりたいという願望やそれに
固執する。異性の服装や行動をしたいと望んでおり、自分の性別を拒否したいと考えている。
こうしたことが最初に現れる時期は、就学以前である。男児は女性的な遊びなどに心を奪われ、
しばしば女性の衣服を着用する。女子向けのゲームや遊戯に加わる。学童期では仲間外れや
いじめが生ずることがある。大多数が思春期に入る前に消退する。
(C)性嗜好障害paraphilic disorder
1.フェティシズムfetishism
性的満足のため、物体を使う。性的対象となるものは、靴、手袋、下着、靴下などがある。多くは、
身に着けるものである。ほぼ男性にのみ認められる。
2.フェティシズム的服装倒錯症fetishistic transvestism
性的興奮を得るため異性の衣服を着用する。好んで異性の服装を身に着けるもの、人目を避けて異性の
下着を身に着けるもの、着衣全部を異性のものに換えてしまうものなどがある。ほぼ全例が男性である。
性的興奮を伴う。
3.露出症exhibitionism
性器を見せびらかし、周囲の人々の引き付ける露出行為を繰り返す。見知らぬ人や公衆の面前で性器を見せる。
強い衝動に基づいて、反復的に行われる。露出することによって性的興奮があり、それに続いて自慰を行う。ほぼ
全例が男性である。
4.窃視症voyeurism
他者の裸や性器、衣服を脱ぐ行為や性行為をのぞき見ることによって性的興奮を得る。男性に多く見られる。窃視
と同時に自慰が行われることがある。
5.小児性愛paedophilia
小児を性欲満足の対象とする。体をなでること、抱擁、接吻、性器いじりであるが、性交に及ぶこともある。大多数は
男性である。
6.サドマゾヒズムsadomasochism
サディズム的行動やマゾヒズム的行動の両方から性的興奮を得る。性行為に際して、縛る、苦痛を与える、
または辱めることを愛好するもののうち、刺激を受け入れることを愛好する場合はマゾヒズム、刺激を
与えることを愛好する場合をサディズムと呼ぶ。
(D)性機能不全sexual dysfunction
1.勃起障害erectile disorder
勃起が不十分だったり、持続時間が短すぎたりするため、性行為を首尾よく行えない。この勃起障害は
性交時に限られ、自慰には問題ないことがある。
2.早漏障害premature ejaculation
挿入後すぐに、本人またはパートナーが満足できないうちに射精する。
3.射精遅延delayed ejaculation
射精の遅延または欠如である。
4.性的欲求低下障害hypoactive sexual desire disorder
性的なことへの関心が減り、性的観念・空想、そして性的活動の中の性的興奮・快感
が生じない、もしくは減退する。
5.オーガズム障害orgasmic disorder
性行為は正常になされるが、オーガズムに達しない、またはひどく時間がかかるため、十分な
満足が得られない。性交時のみに起こり、自慰などでは問題がないことがある。
6.性交時疼痛障害penetration disorder
性交時の性器、骨盤の痛みによって膣による性交が困難になる。その痛みへの恐れや不安、および
性交時の骨盤の筋肉の過剰な緊張が観察される。
【7】心的外傷およびストレス因関連障害
(A)心的外傷後ストレス障害PTSD
甚だしく外傷的な出来事に遭遇することによって引き起こされる反応性の精神障害で
あり、症状としては、外傷的な出来事の再体験、外傷にまつわる事象への回避、否定的
な思考や感情、過覚醒などを呈する。大きく4項目に分けられる。@意識して
いない状況でも外傷体験が何回も自然に思い出されたり、夢に何度も出てきたり、
こうしたフラッシュバック症状が見られる、A外傷体験やこれに関連した不快な記憶や考え、
感情を回避したり、外傷体験を思い出させるような場所や人物などを回避する、B外傷となった
出来事の重要な局面を思い出せない、自分あるいは他者に対しての信頼や期待がまったく
もてない、外傷体験の原因や結果に対して自分や他者の非難につながるような曲解した
思考しかできない。また、恐怖・怒り・罪悪感などの感情が持続し、興味や社会参加の
極端な減退、他者に対する疎外感が見られる、Cイライラした態度や激しい怒り、自己破壊的
な行動、過覚醒、亢進した驚愕反応などが見られる。これらの症状が1ヵ月間以上見られる。
(B)急性ストレス障害acute stress disorder
甚だしく外傷的な出来事に遭遇することによって引き起こされる急性の反応性精神障害である。
解離性健忘や離人症あるいは感情の麻痺といった解離性症状や、外傷的な出来事へのフラッシュバック
様の再体験などを呈する。症状は外傷体験後1ヵ月以内に収まる。特に意識していない状況下でも
外傷体験が自然に思い出されたり、夢に何度も出てきたり、外傷体験があたかも繰り返されるような
フラッシュバック症状や、幸福感や満足感を持てない、周囲または自分の現実感が変容した感覚や、
外傷的出来事の重要な側面が想起できない、外傷的出来事やこれに密接に関連した苦痛な記憶・思考・
感情の回避や、これらを想起させる対象の回避、睡眠障害、集中困難、原因のないイライラ感、過剰な
警戒心、過剰な驚愕反応などが見られる。
(C)適応障害adjustment disorders
原因となるストレス要因については経済的なもの、健康上の問題、対人関係の悩みなどが一般的である。
ストレス的な出来事に対する情動的反応で、不安や抑うつ気分などであり、日常生活に障害を及ぼす
レベルである。明らかにストレスとなる要因に反応してストレスの発端から3ヵ月以内に見られる。
仕事ができないなどの社会的役割や、家事ができないなどの家庭的役割の遂行困難が一般的である。
(D)反応性愛着障害reactive attachment disorder
発達上の障害ではなく、幼少期の著しく不遇な養育体験(社会的なネグレクトまたは養育者の剥奪・養育者の度重なる交代)から由来する。幼児・小児期の不適切な社会的
関係を呈する。不適切な関係とは、めったにあるいはごく少しだけしか、養育者である大人に対して
愛着行動を示さない。5歳以前に、社会的な関係性に広範な障害をきたす。具体的には、大人の養育者に
対しての陽性の感情に欠け、情動の制御が悪く、養育者から得られる快適な支援を求めない、あるいは
反応しないといった、関係性の障害である。苦痛な時でも大人の養育者に対して、めったにあるいは
最低限の安楽を求めたり反応したりしない。他人に対する最小限の対人交流や情動反応しか示さず、理由の
分からないイライラした行動や、悲しみ、あるいは恐怖におびえる態度などが見られる。
(E)脱抑制型対人交流障害disinhibited social engagement
発達上の障害ではなく幼少期の著しく不遇な養育体験に由来する。幼児・小児期の不適切な社会的関係
を呈する。ほとんど初対面の人物に対して、警戒心などがなく過度に馴れ馴れしい態度や行動をとる。
【8】統合失調症schzophrenia
(A)急性期の症状
1.幻覚
統合失調症ではしばしば幻覚が出現する。幻覚のなかでは、幻聴auditory hallucinationが多く、急性期に
最も高頻度に見られる症状の1つである。多くは他人の声が聞こえてくるという言語性幻聴で、断片的な
言葉から、複雑な内容までさまざまである。内容は噂、悪口、批判、命令、脅迫など悪意のあるものが
多い。体感幻覚cenesthopathyは幻聴に次いで多く、「脳が溶けて流れ出す」「性器をいたずらされる」
などの身体の異常感覚であり、被害的意味付けがなされることが多い。幻視visual hallucinationは
統合失調症ではまれである。幻嗅や幻味も時に見られる。
2.妄想
妄想の種類としては、関係妄想delusion of referenceが特徴的である。これは周囲の些細な出来事、
他人の身振りや言葉などを自己に関係づけるもので、嫌がらせ、当てつけなど被害的にとらえることが
多い。だれかから危害を加えられる、苦しめられる、など被害感の強いものを被害妄想delusion of persecution
という。このような関係-被害妄想はさまざまな形をとり、他人から注目されている、監視されている
という注察妄想delusion of observation、跡をつけられるという追跡妄想delusion of pursuit、電波や
機械で苦しめられるという物理的被害妄想、食物や薬の中に毒が入っているという被毒妄想delusion of poisoning
などがある。
3.自我障害
自分の考えや行動が自分のものであるという意識が障害される。自分の考えでない考えがひとりでに浮かぶ
という自生思考autochthonous ideaも見られる。させられ体験(作為体験)delusion of controlは、他人
の意志で動かされ、操られているという体験である。思考面ではさせられ思考と呼ばれ、自分の考えが他者から
干渉されるという思考干渉influence of thought、他人の考えを吹き込まれるという思考吹入thought insertion、
自分の考えを抜き取られるという思考奪取thought withdrawalがある。自己と外界との境界(自我境界)も
障害される。考想伝播thought broadcastingは、自分の考えが自分だけのものでなく、他の人々が、時には
世界中がそれを知っているという体験である。考想察知mind readingは、自分の考えが他人に知られてしまう
というものである。
4.思考過程・会話の障害
初期には会話の内容が漠然としていて、意味を把握しにくいことがある。会話の文脈がまとまらず、次第に
主題からそれて、筋が通らなくなる。ほとんど意味をなさなくなったものを支離滅裂あるいは滅裂思考
incoherence of thought、無関係な言葉のサラダword saladという。思考の流れが突然止まってしまう
思考途絶blocking of thoughtが見られることもある。
5.意欲・行動の障害
興奮と昏迷、カタレプシー(強硬症)、反響言語、反響動作、拒絶症、常同症などを示す。
6.感情の障害
様々な形で現れる。不安、抑うつ、当惑、情動の不安定性などがしばしば見られる。また急性期の陽性症状
が軽快した頃に抑うつ状態に陥ることがあり、特に自殺に注意が必要である。また一方で、喜怒哀楽の感情
表出が減少し、表情は乏しく、声も単調になる。また、空笑silly smileなど、その場の状況などと不調和な
感情表出が見られることもある。
7.両価性ambivalence
同一の対象に対して、愛と憎しみなど、相反する感情が同時に存在する。感情だけでなく、意志(何かを
しようとすると同時に、するまいとする)や知的な面(相反する考えを同時に持つ)にも認められる。
8.自閉autism
外界に比して内的生活が病的に優位となり、現実から離脱してしまう。外界の現実的意味は乏しくなり、
自閉的世界を現実として生活するようになる。
9.疎通性の障害
統合失調症の患者さんと相対したときに、会話は成立しても、共感性が乏しく、意思が通じにくいという
印象がある。
10.病識の障害
急性期にはほとんどの患者さんに病識insight into diseaseがないが、自分が何かおかしいという病感は
もっていることもある。
(B)慢性期の症状
慢性期にも幻覚や妄想はしばしば見られるが、急性期に比較して、不安や恐怖などの感情反応を伴わない。
誇大妄想は慢性期に見られることが多い。誇大妄想には、自分が救世主であるというような宗教妄想、
自分は高貴な家系の子孫であるという血統妄想、他の人から愛されているという恋愛妄想などがある。
慢性期に、会話が少なくなり、内容も乏しくなる思考の貧困alogiaも見られる。通常の語彙にはない
言葉を作る言語新作neologismが見られることもある。自発性減退は、慢性期の最も明らかな症状で
あり、甚だしい場合は、終日臥床して過ごす無為abuliaとなる。表情が硬く乏しく、ひそめ眉やしかめ顔、
独語monologueが見られることがある。奇をてらうような衒奇症mannerismやひねくれもみられたりする。
感情鈍麻も慢性期によりはっきり現れ、周囲に無関心、冷淡となる。
(C)認知機能障害
広範囲な認知領域に軽度ながら低下が認められる。なかでも言語性記憶、実行機能、注意の障害が
比較的顕著であり、社会的認知機能の障害も報告されている。
【9】うつ病と双極性障害
《T》症状
(A)抑うつエピソード:うつ病相
1.抑うつエピソードの基本症状
@抑うつ気分
患者さんは、「気が滅入る」、「気分が落ち込む」、「憂うつ」、「悲しい」、「希望が持てない」、
「寂しい」、「むなしい」、「くよくよ考え込む」などといった言葉で表現する。また、暗く沈んだ表情、
単調で力のない口調、うつむきがちな姿勢、涙もろさ、といった形で表現されることもある。
A興味・関心や喜びの喪失
趣味や娯楽など、かつては楽しみにしていたことにも興味を持てず、楽しくも感じ
られない。新聞やテレビなどにも興味が薄れ、仕事や学業にも関心が乏しくなる。
B体重あるいは食欲の変化
食欲の低下は、「おいしいものを食べたいと思わない」、「おいしいと感じない」といった
訴えになることが多い。食欲の低下から体重減少に至る。時に、食欲が亢進して体重が増加
する。
C睡眠の変化
不眠の訴えは、頻度が高い。「寝つきが悪い」、「途中で目が覚めて、もう一度寝付くこと
ができない」、「朝早く目が覚めてしまう」などが訴えられる。時に、過眠も起こるが、
「眠ってもすっきりせず、長い時間、眠ってしまう」といった感じになる。
D精神運動性の焦燥あるいは抑制
精神運動性の焦燥とは、例えば足踏みを頻回にする、手をよじるなどがある。抑制では、
動きが減り、会話も少なくなることである。抑制が強くなると、外からの刺激にも反応せず、
言葉を発することもなく、ひたすら横になったままの状態になる。
E疲労感または気力の減退
「疲れやすい」、「おっくう」、「やる気が出ない」、「気力がわかない」などといった表現をとる
ことが多い。
F無価値観あるいは自責感
自己評価が極端に下がり、「自分は役立たずの人間だ」といったとらえ方、「皆に申し訳ない」
といった考え方が生じがちである。
G思考力や集中力の減退あるいは決断困難
「考えが進まない」、「決められない」といった訴えが生じる。考えが円滑に進まず、注意を集中できない
と感じられる。また、迷いを生じて、決断がつかない。
H自殺念慮や自殺企図
「役立たずの自分などこの世の中にいないほうがよい」、「迷惑をかけて申し訳ないので、消えて
なくなりたい」など無価値観や自責感と関連して、あるいは「じっとしていられず、辛くて死んでしまい
たい」など焦燥感と関連して自殺念慮が生じる。さらに、自殺行為そのものに至る。
Iその他の症状
不安、性欲減退、身体の痛み、発汗、便秘などの症状も見られる。
2.日内変動
抑うつ気分や制止などの症状は、1日の中で強弱が変動する、日内変動を示す。「朝起きた時の気分が最悪だ」、「朝、何も
する気分にならない」といった朝に最も調子が悪く、夕方以降になると少し楽になるといったパターンを示すことが多い。
3.うつ病相に伴う妄想
うつ病相の患者さんは、抑うつ気分、無価値観、自責感が生じるが、自分の置かれている立場を過度に
否定的にとらえているためである。この否定的とらえ方の延長上にある妄想が多い。具体的には、「取返し
がつかない過ちを犯した」などの罪業妄想、「不治の病にかかっていて、助からない」といった心気妄想、
「家に金がないので入院費が払えない」などの貧困妄想などが見られる。まれに、幻聴、幻視体験を
呈することがある。
(B)躁病エピソード:躁病相
基本的特徴は、気分が高揚する、開放的になる、あるいは怒りっぽくなる、気力・活動性
の増加である。高揚した気分とは、「気分が良い」、「ウキウキする」といった表現と
なり、周囲も「快活」、「陽気」ととらえる。また、気分が開放的となるので、見ず知らずの
人に話しかけたり、外見的にも服装や化粧が派手になることが多い。ただ、こうしたことが、
他者に妨げられたりした場合には、怒りっぽさが前面に出る。さらに、自分が病気であるという意識は
乏しく、むしろ好調と考えていることが多く、治療導入に困難を伴う。
1.過度の自尊心あるいは誇大的思考
自己評価が高まり、思考も誇大的になる。自己の能力を過信し、実現不可能な計画を立てる。
時に、「自分は神と関係がある」と言ったりする。
2.睡眠に対する欲求が減る
睡眠時間が短すぎても、すっきりした気分で目覚め、睡眠不足とは思わない。
3.多弁で話したがる
話したい気持ちが次から次へと生じ、声も大きく、早口で、周囲が口を挟むのも難しい。内容も、
ダジャレや悪ふざけが多い。
4.考えが次々浮かぶ
考えが次々浮かび、多弁となる。話す内容も次々に変化し、関連性が乏しい話題に
移っていく。
5.注意の散漫
容易に注意がそれてしまい、話している相手の服装に気が散り、話題に集中できない。
6.目標を持った行動が高まる
性的、職業的、宗教的、政治的な目的をもった計画や行動が増加する。時には、
足踏みを頻回にする、手をよじるなどが見られる。
7.困った結果にも気にせず、楽しみに集中する
開放的で、計画性が乏しく、誇大的な気分により、浪費、粗暴な運転、性的逸脱行為
などへ向かう。
(C)軽躁病エピソード:軽躁病相
その重篤さも社会的・職業的機能障害を起こすほどでない。入院も必要でない。
《U》分類
(A)うつ病
抑うつエピソードがある。過去に躁病エピソードがない。
(B)持続性抑うつ障害(気分変調症)
2年間以上の期間、抑うつ気分のある日が多く、しかし抑うつ気分が抑うつエピソード
に至らない状態である。
(C)他の医学的疾患による、あるいは物質・医薬品誘発性抑うつ障害
1.身体疾患による抑うつ障害
抑うつ障害を引き起こす一般身体疾患として、中枢神経系疾患では、脳血管障害、
パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、頭部外傷があり、内分泌疾患
では、甲状腺機能低下症、クッシング病があり、自己免疫疾患では、全身性エリテマトーデスがある。
2.医薬品・物質誘発性抑うつ障害
抑うつ障害を引き起こす医薬品として、特に、副腎皮質ステロイドとインターフェロンが
挙げられる。物質として、特に、アルコール、アンフェタミン、コカインが挙げられる。
(D)双極T型障害
1回またはそれ以上の回数の躁病エピソードが見られる。抑うつエピソードはなくても
よい。
(E)双極U型障害
少なくとも1回の抑うつエピソードと、少なくとも1回の軽躁病エピソードが経過中に生じる。
(F)気分循環性障害
2年間以上の期間、複数の軽躁病エピソードと、抑うつエピソードに至らない程度の
抑うつ症状を示す。